オーソドックスで素朴なデザインの万年筆~クレオスクリベントクラシック~

5月14日(土)15日(日)に590&Co.さんと共同開催する出張販売“&in横浜”  https://www.p-n-m.net/?tid=5&mode=f15 まで1か月を切りました。

ペン先調整、万年筆の調整販売をご希望の方は、こちら(当店HPの予約フォーム)から→ Pen and message. (p-n-m.net) ご予約をお願いいたします。商品のご購入などは、予約の必要はありませんので、お気軽にお立ち寄り下さい。

出張販売にお持ちする商品は、なるべく種類を多くと思っていて、オリジナル商品、革製品、木製品、システム手帳リフィル、スタンプ、インクなどの準備を進めています。

万年筆は私がお勧めしたいスタンダードなデザインのものを中心にと考えていて、特にクレオスクリベントをある程度種類を揃えて持って行くつもりです。

派手なもの、押し出しの利いたデザインのものが持てはやされる現代において、クレオスクリベントはシンプルで素朴なデザインのものが多く、それが特長的でもあります。

万年筆においてそういうものは本当に少なくなりました。

金ペン先の万年筆で素朴なものというのは本当になくて、クレオスクリベントクラシックはまさにこれだと思いました。飾り気がなく、とてもシンプルな素朴な万年筆は懐かしささえ感じさせてくれる万年筆です。

使ってみると少し長めであまり太くないボディはとてもバランスが良く、自由自在に操れる感じがし、通好みの渋い万年筆だと言えます。モンブランNo.24などの1960年代の、万年筆が実用品だった時代の万年筆に通じる雰囲気を持っていると思いました。

クラシックゴールドというモデルが金ペン先を備えたものですが、銀色の金具のクラシックロジウムはEFのみ14金ペン先仕様という変わり種です。

コストパフォーマンスも高く、1本持っていてもいいモンブラン、ペリカンなどと個性がかぶらない万年筆だと思います。

クレオスクリベントは横浜だけでなく、札幌、東京、福岡などの出張販売でも持って行く予定です。

東ドイツの慎ましやかな国民生活をイメージさせる、クレオスクリベントの今の万年筆にはない素朴で実用本位な趣も、魅力的だと思っています。

⇒クレオスクリベントTOP

サドルプルアップレザーの文庫カバー

若い頃は実用書やビジネス書など、何かのためになりそうな本ばかり読んでいました。昼食代を浮かせては本を買って、それを自分へのささやかな投資にしていた。

それらを読むことで自分の仕事が良くなると信じていたし、いずれそれらが自分の血となり肉となると思っていました。実際に仕事に対する考え方や心の持ちようなどは、本から教わったこともあると思います。

その頃からだいぶ齢をとって、今ではもっと幅広いジャンルの本を読むようになりました。小説も読むようになって、読書を今まで以上に楽しんでいます。

通勤時間は集中して本が読める大切な時間で、片道1時間弱のこの時間を楽しみにしています。電車の中でスマホで音楽を聴いたり、映画を観たりするのと同じように、読む人によって見える情景の違う「本」というエンターテイメントを楽しんでいます。

通勤で読むのは文庫本や新書が中心なので、内容や厚みに合わせていくつか持っている文庫本カバーを選んで使っています。

本が好きな人ならきっと私と同じようにブックカバーを取り替えて使うだろうと思って、厚み調整のついていない嵌めころしタイプの文庫カバーを作りました。その方がピッタリ合ったら持ち心地も良いし、見た感じもかなりスマートになります。

イメージしたのは少し厚め、2センチ程度の厚みの本がピッタリ合うようにしています。きっと皆さんのお手元にも合う本があると思いますが、身近なところで言うと新潮文庫の司馬遼太郎の「関ヶ原」などがピッタリです。

他にも例えば厚みの合う文庫サイズのノートを探してみると、本革ノートにもなります。

製作してくれた若い職人さんは、持ち心地の良さを狙ってなるべくステッチが外側を通るようにしてくれています。その方が文庫本とカバーの一体感が増しますし、細かく正確なステッチはブックカバーにより端正な趣を与えてくれています。

最近は、文庫本でも栞のついていない本があります。読み始めてしまってから困ることがあって、そういう経験から今回は栞も作っていただきました。ブッテーロの端材で作った栞は、ブックカバーの内側と同じ素材なので、統一感もあってセットしておきたくなります。

革で商品を企画すると、端材でも何か作れないかと考えます。周りにいる職人さんたちはそういう意識を持って取り組んでおられる方が殆どです。端材なので作れるものには限界があるけれど、大切な資源を無駄にすることなく使いたいと思っています。

サドルプルアップレザーは、滑らかな手触りとタフな質感を併せ持った革でとても気に入っています。実用と美しさを兼ね備えた、理想の文庫カバーができたと思っています。

⇒サドルプルアップレザー 文庫カバー

M6サイズジョッター

お客様と話している時に、メモしたいと思ってもノートや手帳を開くことが憚られます。小さなメモ帳であっても「取り出して開いて書く」という行為が相手の話を遮ってしまうような気がするし、厚いシステム手帳や大きなノートなら尚更です。

昨年11月当店に泥棒が入った次の日、予定していた旅行に半ばヤケクソで出掛けましたが、その旅先でメモジョッターの代わりになりそうなものを見つけました。それをアレンジしてペンホルダーをつけて使っていましたが、これだとお客様と話している時でも自分の精神的抵抗が少なく、とても快適に使うことができました。ジョッターという存在をもっと早く思い出すべきでした。

メモジョッターは、情報カードが使われていた時代にはよく使われていたもので、昔から微妙に違う様々な形のものが作られていましたし、私もいくつか使ってきました。

シンプルなだけに使い勝手は良く、取り出してすぐに書くことができて、薄いのでジャケットのポケットやシャツの胸ポケットに入れておくこともできる。

自分なりにアレンジしたものを半年ほど使ってみましたが、皆さんにお勧めできるものだと思いました。そこでM6手帳を作ってくれた若い職人さんに、M6リフィルと5×3カードが入り、ペンホルダーが付いたジョッターを作っていただきました。その革には、丈夫で美しい銀面を持つサドルプルアップ(チョコ)と、エージングで滑らかな手触りと美しい艶が出るブッテーロ革(ワイン)の組み合わせを選びました。

筆記面と背面がサドルプルアップレザーのものは、紙押えとペンホルダーがブッテーロ。

筆記面、背面がブッテーロのものは、紙押えとペンホルダーがサドルプルアップレザーになっています。

M6用紙と5×3情報カードでは、M6の方が少しだけ幅広ですが、共用で使えるようになっています。

ジョッターの使いやすさのポイントは、紙のセットのしやすさと挟んだ紙の外れにくさだと思っていて、それを満たしたものを職人さんが形にしてくれました。今までこんなに紙がセットしやすいジョッターに出会ったことがありません。

ペンホルダーの一部が紙押えも兼ねていて、これがこのジョッターオリジナルのアイデアになっています。シンプルでとても使いやすいものになりました。

写真で目立つように撮りましたが、革を3段重ねたコバの部分も気に入っています。

私はジョッターに挟んだ紙にその日のメモをいくつも書き込んでおいて、それを家に帰ってから整理してM6システム手帳に転記しています。

厚めのM6用紙だと12枚程度が予備の紙を収納できるスペースに入るので、出先でメモを使い切ってしまう心配もないと思います。

人それぞれメモの使い方があると思いますが、ジョッターは薄くて邪魔にならないという点、表紙のないシンプルな構造であるという点において、様々な使い方に対応する究極のメモ帳としてステーショナリーの定番的な存在だと思っています。

ジョッターはステーショナリーの定番ではあってもマイナーな存在で、今まで仕様にこだわって、良い素材を使ったものは少なかったと思います。当店も5年ほど前にノートカバーの付属品としてしか作っておらず、復活させたかったステーショナリーのひとつでした。

このジョッターのペンホルダーに収まるペンは細めのものをイメージしました。あまり太いペンだとかさ張ってしまって、ジョッターの使いやすさを阻害してしまいます。

イメージしたのは、ファーバーカステルクラシックのボールペン、ペンシルや時計作家ラマシオンの吉村さんがハンドメイドで作っているgate811のボールペン、あるいは鉛筆など9.5mmほどのペンがピッタリ合います。

昔から使われていたけれど、最近あまり使われなくなったものの中にも良いものはたくさんあります。ジョッターもその一つで、こだわった良い素材で、しっかりした良い作りのものができたと思っています。

⇒M6サイズジョッター

ペンを撮る

素人ながらもホームページの写真にはこだわっています。

店を始めたばかりの時はこだわる知識も余裕もなかったし、写真の重要さに気付いていなかったのかもしれません。

必要だったから写真を撮り続けていましたが、お客様方の影響もあって徐々にこだわるようになって、カメラもレンズもそれなりのものを揃えて撮るようになりました。

プロの人に言われたことがありますが、北向きの当店には午前中とてもいい光が入ります。

その光の中で撮った写真は、たまに私の腕でもとても良い出来栄えになります。楽しくていつまでも撮っていられます。ペンを撮っていて困ることはペンを撮る時に転がるという問題です。

何か固定するものを使いたいけれど、店によくあるアクリル製のペンの枕は、木の机の上では写真が何となく白けるようでなるべく使いたくない。

そんな時あればいいなと思っていSMOKE(スモーク)の加藤さんに作ってもらったのが、ウォールナット製のペンの枕です。ご自分のペンを撮ってSNSに上げたりする人は多く、そういう人にもぜひ使ってもらいたいと思いました。

加藤さんにはペンテーブルやブロッター“パゴダ”を作っていただいているので、その端材を活用できたところにも価値があると思っています。

写真を撮らない人でも小さくてシンプルなペン置きは便利な存在で、ペンケースに入れておいて出先で使うことができます。

もうひとつ本格的なペントレイを作ってもらいました。適度な間隔を取ってペンの取りやすさも考えた3本用ペントレイです。

オーバーサイズのペン、例えばモンブラン149などならペンの3分の1くらいが溝に沈むようになっているので転がる心配がありません。

そういうものが机上にあるとペンの決まった置き場所になっていいし、3本置けるというのはとても実用的です。

スモークの加藤さんは均一的に色の揃ったウォールナットよりも、色の濃い所と薄い所のあるような変化のある素材をあえて選んで使っています。そいうものの方が面白いし、自然だからと言われます。

私も加藤さんの言葉に強く共感します。

せっかくの自然素材なので均一さをそこに求めるのではなく、そこに景色を見るのが大人の感性なのではないかと個人的には思っています。

加藤さんの木製品は、寡黙なその人以上に雄弁にいろんなことを語っているような気がします。

⇒SMOKE(スモーク)3本ペントレイ

⇒SMOKE(スモーク)ペンの枕

インクがたくさん入るペン

ページ数の多い分厚い文庫本は得したような気がして嬉しい。

それは早く小説の結末を知りたいという逸る気持ちと、少しでも長くその物語の中に浸っていられるというジレンマを引き起こすけれど、小説を同じ選ぶならなるべく厚い本を選んで、長く読んでいたいと思う。

それと同じ感覚だと思いますが、メモ帳も紙がたくさん束ねられた分厚いものに安心感を覚えます。分厚いメモ帳を一気に使えるはずはないのに、メモが減って薄くなってくると心細く、寂しくなります。

そしてこれも同じ感覚で、できればインクがたくさん入るペンを持ちたいと思います。インクがたくさんその中に入っているということが安心感になる。

私の使用頻度が最も高い万年筆、ファーバーカステルクラシックを使っていてよく思うのは、この万年筆にパイロットのコンバーター70が使えたらいいのにということです。

ファーバーカステルについているヨーロッパタイプのコンバーター、カートリッジインクは私にとっては容量が少なく、すぐにインクがなくなってしまう印象があります。ヨーロッパタイプのコンバーターよりたくさんのインクを吸入することができる、コンバーター70が使えたらいいのにと、インクがなくなるたびに思っています。

しかしコンバーター70はパイロットの独自規格のコンバーターで、パイロットの万年筆でしか使うことができません。

万年筆を使う人の中には、インクの吸入も楽しい作業だと言う人もいるけれど、私のようにインクがたくさん入って欲しいと思っている人も多いので、大容量への憧れもジレンマなのだと思います。

当店で扱っている万年筆でインクが大量に入る万年筆の三巨頭は、パイロットカスタム823とビスコンティホモサピエンスの品々、そしてツイスビーECOでしょう。

前者2つはプランジャー式の吸入機構を備えています。プランジャー式吸入機構は、尻軸を引っ張り上げて、押し込むことで、一気に大量のインクを吸入します。

カートリッジ2,3本分のインクを吸入しますので、吸入作業の回数は半分以下になります。私たちの願いを叶えてくれながらも、ジレンマを強くします。

ツイスビーECOやダイヤモンドが装備しているピストン吸入機構も大量のインクを吸入することができ、吸入したインクがタンクの中でチャプチャプしているのが見えて嬉しい万年筆です。

台湾のメーカーは万年筆を使う人のこうあって欲しいというところを上手く突いてきます。それはツイスビーもレンノンツールバーも同じかもしれません。

レンノンツールバーのオーパス88リン・ユンは、スポイトでインクを注入するという、より原始的な(?)インキ止め方式の万年筆です。

インキ止めというのは、戦前、戦後の日本の手作り万年筆の多くが採用していたインク供給方式で、こういう万年筆を見ると私は古臭さを感じてしまいますが、オーパス88はインキ止め方式を採用しながらも洗練された爽やかな万年筆に仕上がっています。

インキ止め万年筆は、ボディ全体がインクタンクになりますので、インクをたくさん入れたいという人の気持ちを満足させてくれるでしょう。

最近、ラメの入ったシマーリングインクが多く発売されています。

当店もオリジナルインク稜線金ラメ、銀ラメを発売していて、あくまでもガラスペン用としていますが、スタッフがオーパス88(M)に入れてみたところ、1か月ほど経ちますが詰まらずにちゃんとラメがペン先から出てくれています。首軸を外してスポイトでインクを入れるので、ラメ入りでも入れやすく洗いやすいのも良いところです。

しかし、これはメーカーは絶対に止めて欲しいとしている自己責任での使用になります。

インクがたくさん入る万年筆にロマンを感じてしまうのは、不思議な感覚ですが、やはり厚い本を喜ぶ感覚に近いのだと思います。

⇒レンノンツールバー TOP

590&Co.さんとの出張販売

今の時点で確定している出張販売のスケジュールを公開しました。(⇒出張販売スケジュール)

今だに続くコロナ禍での生活にも、気付けば慣れてきた。でも仕事の立場上遠出を控えなくてはいけない方も多くて、何となく不自由に感じられていることが多いのではないでしょうか。

そういう方々のためにも、また出張販売に出ることにしました。

店の仕事を淡々とこなすのも楽しいと思い始めていました。外に出ない生活が当たり前になっていて、家と店を往復する日常も良いものだと思っていたけれど、このまま店の中にいると仕事が決まった中で回るだけのような気がして、焦りのようなものを感じ始めていました。やはり色々なお客様に会って、刺激を受けたい。

どうせなら1年かけて、日本中を巡るくらいのことをしたいですが、店での仕事もありますので月1回くらいのペースになっています。

2月に590&Co.の谷本さんと晩御飯に行った時に、一緒に出張販売をしてみようかという話になりました。

谷本さんのことは、前職の時に取引先の人から「レストランを経営していた人が分度器ドットコムというステーショナリーのWEBショップを立ち上げた」と教えてもらったことがあり、密かにすごい人だと思っていました。

最近では2軒目の590&Co.まで立ち上げられて、やりたいことが次々と溢れてくるようです。

知り合ったのはこの店を始めた頃で、先ほどの取引先の方の紹介で分度器さんのオフィスを見学させてもらった時からでした。

ル・ボナーの松本さんとともにヨーロッパに買い付け旅行に行ったこともあるし、長い付き合いになります。色々な人と知り合ったり疎遠になったりを繰り返してきたけれど、谷本さんとはずっと続いています。

同い年で気が合うということもあるけれど、私は何よりも谷本さんの仕事の才能や目端が利くところを尊敬しています。

そんなおじさん二人の出張販売ですが、当店と590&Co.さんとの共同出張販売なら喜んでくれるお客様も多いと思うし、何よりも自分たちが面白いと思いました。

合同出張販売の名前を“&”としました。

両店名に&があるし、当店と590&Co.さんとの&、お客様と私たちの&、人と人との繋がりを表す記号。この企画はまさに様々なつながりから生まれたものだと考えるとピッタリなネーミングで、このコンセプトとネーミングは谷本さんの頭の中に密かにあったようでした。

開催場所についていろいろ探してみましたが、横浜という場所に思い当った時に、&の最初の開催場所にピッタリだと思いました。

私たちのお客様もたくさんおられるし、横浜の方がはるかに大きな街ですが、神戸に近い雰囲気を持った街だと思っています。

私の息子が初めて一人暮らしを始めたのが横浜市伊勢佐木町で、「& in横浜」 の会場も伊勢佐木町の駅の近くなので様子が分かっているし、交通の便も良いので来てもらいやすいと思います。

出張販売の品揃えを考えると自分の店の弱いところがよく見えてしまいますが、最近は充実してきたと思っています。

オリジナルインクはずっと販売してきた8色の他に、昨年新たに3色追加しました。神戸ペンショーで完売してからしばらく品切れしていましたが、再入荷しました。

「虚空」は、机から目を上げてふと見た何もない空の色を表現した色でした。その時井上靖の”天平の甍”を読んでいて、仏教的なものに惹かれる気分でもあったのかもしれないけれど、色のイメージを表した名前だと思うし、力の抜けた自然体な良い色だと思います。比較的乾きが早くて、にじみの少ない扱いやすいインクです。

「稜線」には金ラメ入りと銀ラメ入りがあります。

私が普段見る山はいつも町から見上げたイメージなので、幼いころ母の実家でよく見ていた、四方山に囲まれた信州の風景が思い出されます。朝日が差してきた頃銀色に輝く稜線、夕日に照らされ金色に染まった稜線という、郷愁の景色を連想させるインクができたと思います。

今回から「稜線・銀ラメ入り」はラメの量をかなり増量しました。

私は横浜での出張販売「&」の後、札幌、東京での出張販売を続けますが、久し振りの旅を楽しみにしています。

⇒オリジナルインク虚空・稜線(金ラメ入り)・稜線(銀ラメ入り)

SMOKEブロッター「パゴダ」

オリジナルインク・虚空や、ローラー&クライナーのパーマネントブルーのような薄めで紙に馴染みやすい色のインクが好きです。他には、ヌードラーズのネイビーも好きでよく使います。

ネイビーは最近の流行とは違ってかなり濃い色のインクで、書き味も良くなり万年筆で書いている醍醐味が味わえます。だけど海外のM以上のペンで使うと、紙によってはなかなか乾かないということがあります。

乾きが遅いというのは、濃い色のインクの常で、インクが紙に収まるのを待つ心の余裕が万年筆を使う者の心得なのかもしれないけれど、そんな悠長なことを言っていられる時ばかりでもありません。

当店はネット販売の発送業務と店舗営業を同時にしているので、来客の合間にネットのお客様へのお礼状を書くことが殆どなので、乾きは早くあってほしいと思います。

世の中には「吸取紙」というものがあって、その名の通りインクを吸い取るための紙です。紙の状態のまま使ってもいいですし、ブロッターという器具にセットして使うと、より使いやすく机上での見栄えもします。

お客様からのリクエストも多いのですが、ブロッターにはこだわりがあって、当店ででしか扱っていないブロッターがあります。

時計作家ラマシオンの吉村恒保さんにお願いして作っていただいたのは、アサメラという質量の高い木で作ったブロッターです。これはサイズも大きめで、重量感と圧倒的な存在感を持っています。

ハンドル部分が大きな球形で、握るととても気持ち良く、意味もなく握っていたくなります。アサメラの質感はかなり締まっていて、艶が出てくれそうです。

もうひとつ、最近出来上がったブロッターはスモークの加藤亘さんに作っていただいた「パゴダ」です。

家具職人である加藤さんが、個性を活かしたものを作りたいと試作を繰り返して作り上げた、かなり特長的な形をした意欲作です。机の上のシンボルのような存在になるのではないかと思います。

家具で多用する安定感抜群の素材ウォールナットは、派手な模様はないものの、味わい深い通好みの素材です。個体によって色味の違いがあって、それがこのブロッターの箱に表れていて、面白い味になっていると思います。

パゴダを収める箱は、指物の技術「相鉤の逆留め」という凝った作りになっていて、家具職人らしい取り組みをしてくれていて、こういうところが加藤さんの木製品面白味の一つだと思っています。

パゴダはブロッターに付いている天板(紙を押さえる板)のない仕様ですので、柄入りの吸い取り紙などを使うと映えて、面白い効果を出してくれます。

パゴダと同様、ユニークな形の5本用ペンスタンドペンテーブルは長く作っていただいているものですが、最近認知され始めたのか、よく売れるようになってきました。

ペンテーブルにペンを5本立てている様子は見ていても楽しいものですし、よく使うペンがすぐ手に取れるところに立ててあるのはとても便利です。机上の景色作りと実用性を兼ね備えた、他にないものだと思っています。

ブロッターもペンスタンドもなくても困らないものなのかもしれないけれど、あると万年筆を使うことがもっと楽しくなって、机上の時間が味わい深いものになると思っています。

⇒SMOKE ブロッター パコダ

⇒SMOKE 5本ペンスタンド ペンテーブル

長く使い続けるためのオーソドックスなデザイン オリジナルM6システム手帳

どんなものでも、奇抜なデザインよりオーソドックスなデザインに惹かれます。

振り返って考えると、手元に置いて長く使っているものは、奇をてらわないオーソドックスなデザインのものが多い。それらはスタンダードと呼ばれるものです。

様々な分野にスタンダードと呼べるものはあるけれど、そういうものをよく見て、なるべくそういうものを持ちたいと思います。

長く使い続けられている永遠不変なスタンダードは、万年筆やステーショナリーにも多く存在しています。

他にはないオリジナリティも必要だけれど、良い素材、良い作りでスタンダードと呼ばれるに値するものを形にしていきたいと思うようになりました。

先日発売したM6システム手帳がその第一弾です。

スタンダードとなるものの条件として、オーソドックスで無理のないバランスの良いデザインと考えました。そういうものは安心感があるし、いつも手に取りたくなります。

より幅広い層の人たちに使ってもらいたくて、オーソドックスなデザインで野性味と濃厚な味わいのある素材サドルプルアップレザーと、洗練されたスマートな革シュランケンカーフをご用意しました。

製作してくれた若い職人さんは、それぞれの革の雰囲気に合うようにそれぞれのベルトの形状を変えるなど、細かい所まで独自の工夫を取り入れて楽しみながら作ってくれたのも嬉しかった。

M6システム手帳は、仕事でバリバリ手帳を使う人のバイブルサイズと、筆記面が小さく趣味性が高いM5サイズの中間に位置した、ある程度の筆記面の大きさと携帯しやすいコンパクト感のある程よいサイズです。

このM6システム手帳をオーソドックスなデザイン・上質な革で作ることで、いつも持っていたくなる、長く使えるものが出来たと思います。

これらの手帳にはより革を楽しんでいただけるように、サドルプルアップレザー仕様には同素材の、シュランケンカーフにはブッテーロのペーパーリフターを最初からセットして、表紙を開けた時にすぐに中のリフィルが見えないようにしました。

他にも、ペンホルダー・ページファインダーを同革で作っていただきました。こういうものがプラスチックでなく革であることは、手帳にこだわりのある方には嬉しいものだと思います。

中紙には、智文堂の波文葉リフィルの書き味・使用感がおすすめです。手帳用紙というと薄くてツルツルした手触りの紙質のものが多いですが、智文堂さんの紙は書き味に心地よい手応えがあって、紙質も丈夫なので安心して筆圧をかけることができます。

智文堂さんのリフィルの罫線は、変化のあるこだわったものが多いですが、難しく考えずに普通の方眼や横罫と同じように使えばいいのだと思います。

デザイナーのかなじともこさんが波文葉を発売したので、当店もM6システム手帳に目が向いて今回の企画につながりました。

今回のM6システム手帳製作で目指した、オーソドックスなデザインによるスタンダードステーショナリーコンセプトで王道のデザインのいいものができました。今後も同じコンセプトで色々なモノを企画したいと思っています。

⇒オリジナルM6システム手帳 サドルプルアップレザー

⇒オリジナル DRAPE M6サイズシステム手帳 シュランケンカーフ

時計作家が作るボールペン

ラマシオンの吉村恒保さんが作った時計を毎日着けています。

夕焼けの空を見てきれいだと思った時に、ふと時間を確かめるために見たくなる時計を作りたい、と吉村さんは雑談の中で言われていたことがあります。

多くの人がスマホで時間を確認する時代、時計作家としての時計の存在意義と吉村さんの童心を伴ったダンディズムを表した言葉だと思いました。

私は文字盤の造形からか、針の指す向きによっての景色の違いを感じさせてくれる時計だと思っています。それぞれの時間に心象風景を見出す、感傷的な私に合っている時計だと思います。

もう2年以上着けているけれど、いまだにその印象は変わっておらず、新鮮な気持ちで文字盤を見ることができる。いい時計だと思う。

吉村さんは柔軟で創作欲旺盛な人で、ル・ボナーの松本さんと知り合って、ベルトのバックルも作るようになりました。

当店では吉村さんの時計も扱っているけれど、当店と関わるようになったことがきっかけでボールペンを作り始めました。

M5手帳と合わせて持てるような小振りなボールペンで、こだわりのある良いものがないという私の見解に応えて、小さなボールペンを開発してくれました。

ただ小さくてよく書けるだけでなく、メカ好きの遊び心をくすぐる仕掛けのあるボールペンです。

「ボルトアクションボールペンgate811」と名付けられたそのボールペンは、車のシフトゲートをイメージした機構で、ギアチェンジをするようにレバーを操作して芯をノックして出します。

替芯の交換は、レバーを替芯交換用のゲートに入れて、天ビスを外して、シフトレバーを引き抜くと内部パーツが外れて、替芯が表れます。

これらの細かなパーツやボディは、時計の部品と同じように一つずつ金属から削り出して作られています。

時計作家さんだけあって、とても精密に作られたそれらのパーツの組み合わせでできているボールペンはシンプルなデザインにまとめられています。

替芯は滑らかで自然な書き味のパイロットのBRFN-30を使っていて、実用性にもこだわって作られています。デザイン性だけでなく、正確さを要求される時計の世界で生きてきた吉村さんにとっては当たり前のことなのかもしれません。早くも吉村さんの作る次作のペンも楽しみです。

*gate811の真鍮仕様は現在品切れしていますが3月中旬再入荷いたします。ご予約承っております(こちらのお問い合わせフォームからどうぞ)

*真鍮ボルトアクションボールペン Gate811 ロジウム仕上げ

*真鍮ボルトアクションボールペン Gate811(予約受付中)

小さな店の生き方

また小説関ヶ原(司馬遼太郎著)を読んでいます。

大きな勢力が西と東に分かれたことで、大多数の小さな勢力は自国の継続を願って得だと思う方につき、ほんの一部の武将が正義という理想のもとに信じた側につく。

戦国末期の淘汰の時代、力の大きな者はさらに大きくなり、力のない者は大きな者に吸収されていきました。それは今の時代にも全ての分野で起っていることで、関ヶ原が競争社会の縮図だと言われるところだと思います。

でも万年筆の業界においては、私たちのような力のない小さな存在でも生きる場所があるのではないかと思います。

品揃えの多い大きな店を好む人もいれば、小さなお店でそのお店の品揃えを楽しむという人もいます。お店に対してお客様は様々な好みがあって、自分が買いたいと思えるお店で買われているのだと思います。

小さな存在でも万年筆の世界で生きていくことができると思ったから、私は万年筆を扱うこの小さな店を始めようと思えたし、続けてくることができました。

当時それを理論的に考えることはできなかったけれど、それまでの経験で直感が働いたのだと、今なら説明できます。

関ヶ原でも、勝たないまでも力の小さな小大名がそれぞれの考え方を持っていて、信念を貫く面白い存在として描かれています。それは所領の小ささからくる自由さかもしれません。

当店のような小さな店にも、理想を追うことができる自由さ、気楽さがあります。業績は良いにこしたことはないけれど、それほど大きな売り上げを狙わなくてもいいので、一般的にならずに自分たちが良いと思うもの、面白いと思うものだけを扱うことができます。

万年筆と上質な革を使った革製品とのコーディネートもそのひとつで、当店の特長だと思っています。

画像にありますが、カンダミサコさんに作ってもらっている長寸用万年筆ケースとセーラーエボナイト彫刻万年筆の組み合わせは、侍の刀を思わせるようで気に入っています。そしてイルクアドリフォリオさんが作っているペンケースDUEトリムドロッソは、全体が黒でコバの部分にだけ赤を使っているので、黒のモンブラン149を2本入れるとものすごくかっこいい。

こういう異なるブランドを組み合わせたコーディネートは、楽しみながら今後も続けていきたいと思っています。

当店の強みであり特長なのはやはりペン先調整だと思いますが、最近ペン先調整の需要の高さをより感じています。

ペン先調整のために来店されるお客様、全国から送られてくる万年筆の多さで、いかに多くの人が万年筆に対してこうあって欲しいという希望を持っているかということを感じています。

お店の仕事もありますので一日に数本しかできないため、お送りでの調整依頼の場合、現在一ヶ月ほどお待たせしています。

私は一人一人の書かれるところをイメージしながら、そして書きやすくなった万年筆を使って喜ぶお顔を想像しながらペン先調整をします。

そういうことができるのも当店のような小さな店の強みだと思っています。

当店も独自の考え方を持って、自由に生きるユニークな存在でありたいと思っています。

⇒長寸用万年筆ケース・シュランケンカーフ(ブラック)

⇒WRITING LAB. IL Quadrifoglio (イル・クアドリフォリオ)シガーケース型ペンケース・ Due(ドゥエ)ネロ×トリムドロッソ