
当店のような万年筆専門店だと、お客様の数も少なくゆっくりと時間が流れていて、そこで仕事している私たちの日常生活もゆったりと、時間に追われることなく過ごしていると思われているかもしれません。
でも実際のところは、そんなことはありません。
会社で働いていた若い時は忙しい毎日を過ごしていて、その中で流されずに自分の意識を持って仕事することに気を付けていました。
今は当時とはまた違う忙しさがあって、静かだけど大きな強い波に追われているというイメージです。一つずつ確実に、速やかに片付けていかないと、終わらない仕事に気持ちが疲れてしまいます。
でも毎日があっという間に過ぎて、時間がないと思うのは今も変わっていないような気がします。
思い返すと、店を始めた頃の方がゆっくり書き物をしていたように思いますが、それはきっと就寝時間が遅かったからかもしれません。
店にいるときは店でしかできない仕事をしているので、店外にいる時に書き物をする時間を確保する必要があります。
モノを書く仕事がけっこうあって、店にいる時間以外はほとんどそれに当てています。自分には時間がないと思うと、移動中の時間も何とかモノを書く時間に使わなくてはいけません。
私が毎朝通勤で乗る電車は、座れないけれどギュウギュウではない程度の混み具合です。
立ったまま書くということになりますので、両手が使えるようにリュックかショルダーバッグを斜め掛けにして、A5のルーズリーフバインダーを2つ折りにして手に持ち、大きめの文字で書いています。
その方が乱雑な文字でも、後で清書する時に何とか読むことができます。
本当は、机に向かって原稿用紙を広げて万年筆の書き味を楽しみながら書き物をしたいけれど、今のライフスタイルではなかなかそういう時間が取れません。でも電車の中で書き物をするのは、誰にも邪魔されないし到着までの時間も決まっているのでとても集中できます。
こんな時使う筆記具は、ページの上の方を書く時ペン先が上に向くので、空気が入ってしまうボールペンは向いていないので、万年筆かシャープペンシルを使います。両者を、電車の混み具合に応じて使い分けています。
シャープペンシルはペリカンD400がノック式で重量も軸径も適度で、私にはとても使いやすい。あまり目立つ存在ではありませんが、渋い銘品というのはこういうものを言うのかもしれない、と密かに思っています。
万年筆は持っているものを色々使いますが、ペリカンM400は立ったまま書くのに適した万年筆だと思っています。
ペン先が硬すぎると紙面に対して決まった角度で書かなくてはいけないし、柔らかすぎると筆圧を加減する必要があるので立ったままの不安定な体勢には向いていません。ペリカンM400のペン先の硬さは立ったまま書くのに最適だと思っています。
考えてみるとペリカンM400はサイズも小さく、ポケットに差して携帯するための万年筆ですので、この万年筆が立ったまま書くことに適しているのは当然なのかもしれません。
きっと誰もが忙しい毎日を過ごしています。そんな毎日の生活を、少しの楽しみと張り合いを当店なりのやり方で提供できたらと思っています。